理学療法士:「死」を宣告された方のリハビリ【story1-6:実行】

理学療法士

出会ってから2ヵ月半が経っていました。

「もう1度釣りに行きたい」

この最期の目標を聞けてから、私達は色々な方に協力してもらい準備をしてきました。

そして当日、最初は雨の予報だった天気も曇りとなり、実行に移しました。

 

当日は、ご友人の車に本人と先輩と私も乗せてもらい、釣り場に向かいました。

当初の予定の15分程で現場に到着。

お昼には帰るように医師からも言われていたため、実質50分しか釣りをする時間はありませんでした。

そこにはすぐに釣りが出来るように、ヘラブナ釣り用の川辺に座る椅子のようなものが設置してありました。

 

聞くと、奥様とご友人が協力して、すぐに釣りが出来るように準備していただいていたのです。

「この計画は本当に色々な方が協力してくれている」と感じました。

そして釣りの準備をします。

釣り竿も本人の分は組み立てられており、いざ餌を付けて開始というところでした。

計画段階で先輩や私も「釣りをしたい」と言っていたのを覚えており、

「一緒にやろう」

と言って、2人分の釣り竿のセッティングをし始めました。

釣り竿の準備には竿の組み立てやリールの取り付けで意外に時間がかかります。

私達は、

「私達の分はいいですから、早く釣りを楽しんでください!」

一本分の準備をしていただいた後にも、

「2人で順番に使うので1人1人に作らなくて大丈夫ですよ!」

と言っていましたが、ご本人自らの釣りの時間を割いて、2人分の釣りの準備をしていただきました。

後から聞いたのですが、ご友人が準備をしようとしたところ、私達の準備は自分でしたいと言ってしていたことを聞き、すごく嬉しく思いました。

2人のご友人と本人に釣りのやり方を教えていただきながら、約40分間釣りを楽しみました。

結果は…

一匹も釣れませんでした。

(この釣り場はたまにしか釣れないことや、時間的にも昼はあまり釣れる時間ではなかったため、予測はしていました。出来れば誰か1匹でも釣れると良かったんですけどね。)

名残惜しかったのですが、時間が来てしまったため帰ることにしました。

 

本人はもう体力の限界に来ていました。

帰り道は付き添いがいないと歩けない状態でした。

病院に帰り、

本人から笑顔で「ありがとう」

と言われました。

 

その時は、時間も押しており、次のリハビリの予約もあったため、普通に挨拶をして去りました。

しかし、それが最期のあいさつになってしまいました。

翌日病院に出勤すると、まず看護師から

「~さん、昨晩から混迷状態となり、亡くなりました」

と聞かされました。

 

信じられませんでした。

 

もちろん癌が進行しており、余命3ヵ月と宣告されていた方なので、2ヵ月半で亡くなるのは不思議なことではありません。

…でも考えてしまいます。

「きっと釣りに行ったことが引き金になった」

「私のせいで亡くなってしまった」

「釣りに行こうなんて言わなければ」

先輩や周りの友人からは、

「きっと最期に釣りにいけてよかったと思ってるはずだよ」

「いい思い出が出来てよかったって思ってるよ」

など励ましの言葉はかけてもらいましたが、なかなかそうは思えませんでした。

しばらくは仕事にならないくらい落ち込んでしまいました。

 

しかし、亡くなって少し経った時に、奥様が病院に挨拶に来られた時に

「本当にありがとうございました。私だけだったら最期に主人のやりたいことをやらせてあげられなかった。あなた方のことはよく私にも話していました。最初は笑顔もなくしてしまった主人があれだけ明るく最期を迎えられたのも、あなたのおかげです。」

と言われ、私はすごく救われました。

 

実際、引き金にしてしまったのは間違いないと思います。

今までの行動が正解であったかどうかは今でもわかりません。

ですが、私達が関わり始めたときは、病気の受け入れが出来ず、ずっと横になってやり過ごしていたため、そのまま体力がなくなり動かなくなってしまっていた可能性は高いと思われます。

目標を見つけ、それに向かえたことで、体力維持も出来ていたのだと思います。

この方からは、

『目標があることで、生きている価値が生まれる』

ということを命をもって教えていただきました。

 

それは私達にとっても言えることです。

「人は誰しもが、いつか死にます」

明確な目標を持って生きていくことが人生の質を向上させることにつながると思いました。

この経験を他の方にもお伝えしたいと思い、このように文章化してみました。

 

写真もなく、読みにくい部分も多々あると思いますが、ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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